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【三服文学賞】 受賞作品発表!大賞は平出奔さん「笑っているのがわかる」

 

大賞『笑っているのがわかる』平出奔

副島園賞『朝霧の中で』せとうちひかる

8cacao賞『輪郭に水音』イトウマ

日本香堂賞『水出しの茶と、当たり前の明日』雨宮紫霞

Made inピエール・エルメ賞『月の文字』吉岡幸一

嬉野八十八賞 『五・父・五の風景』磯部まき

選考委員賞 染谷拓郎 推薦 『わたくしは誰かの日記を300円で買う』さとうきいろ

選考委員賞 深井航 推薦『私の好きな事』武富伊万里

選考委員賞 宮脇亜矢 推薦 『耳はていねいに洗う』北木鉄

◆大賞
受賞者:平出奔(ひらいで ほん)
作品名:笑っているのがわかる
ジャンル:小説

選考委員長 小原嘉元 コメント:
軽快な会話劇のなかに古典を活用した構成の妙もあり、物語の世界に引き込む力を感じます。文章から感じとれる電車内での会話の間や同僚が怖いという吐露に、いまの時代を生きる人間の確信のない解に揺れ動くさまが鮮やかに表されており、共感しました。だからこそ紆余曲折を経て辿り着いた「旅行しましょう」という誘いの言葉が一層印象深く残ります。
選考委員コメント:
‐染谷拓郎(株式会社ひらく プロデューサー)
それまで意識していなかったことが、会話の中でふっと息を吐くように出現して初めて自分の思考に気づくことがあります。また、この短い文章のなかに「おれ」と「荒山さん」の”これまで”が染み出して想像でき、作者の文章力の高さを感じます。ふたりの”これから”も読んでみたいです。
‐深井航(株式会社ひらく ブックディレクター)
見えない何かが目の前の当たり前を動かしていることへの漠然とした恐怖など若い感性が文学的情感をもって表現されていると感じました。
構成の面でも、導入の古典落語が単なる引用に留まらず、現代という時間軸を意識する装置として作品の時代性をより立体的に浮かび上がらせています。なにより都会を走る電車の中から生まれた「旅」という風景のジャンプが、「見えないものは怖い」という価値観から「見えないのに笑っている」という逆転に接続している点が見事です。

‐宮脇亜矢(日本出版販売株式会社 ブックカウンセラー)
怖いものを伝えることは、多少なりとも勇気のいることです。自分の在り方、根幹にかかわる大切なことを吐露した後の、「ねえ、今度一緒に旅行しましょうよ。」という唐突さ。軽快な会話に見えますが、瀬口さんの怖さを荒山さんがやすやすと飛び越えた瞬間を捉えているところ、これまで自他ともに表情を気にしていた瀬口さんが自然と笑うという締め方に希望を感じました。

◆副島園賞
受賞者:せとうちひかる
作品名:朝霧の中で
ジャンル:小説

副島園コメント:
春になると茶農家は昼夜問わず茶畑が気になります。一発勝負の新茶の収穫だからです。その独特な雰囲気と風景や空気感がよく表現されています。
また、代々受け継がれていく家業の様子も、おじいちゃんとの会話や距離感で微笑ましく想像できました。

選考委員コメント:
茶畑まで真っ白な道を歩くこと。指でお茶の声を聞くこと。
お茶を摘むという行為に、このような幻想的な美しさがあるのか、とため息がでます。
おじいちゃんの佐賀弁にリアリティや生活感があり、その対比が面白いです。
手を繋いで帰る二人の姿は世代を超えて、過去にもあったし、未来にもあるのだろうと想像できる点も作品に奥深さを与えています。

◆8cacao賞
受賞者:イトウマ
作品名:輪郭に水音
ジャンル:短歌

8cacaoコメント:
その場の状況が思い浮かぶだけではなく、そこに流れる想いや感情、それまでの過去までも感じ取れるような奥深い表現力に惹かれます。
表現力の“美しさ“や”上品さ“だけで無く〝感情“まで丁寧に伝わる文章で、読み終えた後に自分がその物語の中に入り込んだ感覚になりました。

選考委員コメント:
温泉の熱い地獄に対して、日常を平凡の地獄と表せる言語感覚をうらやましく思います。
たとえ底まで水を抜いてもここは温泉だろうという概念的な視座から、温泉に包まれているときの身体感覚まで、様々な角度から温泉を見つめており、作者の物事への解像度の高さが伝わってきます。

◆日本香堂賞
受賞者:雨宮紫霞
作品名:水出しの茶と、当たり前の明日
ジャンル:エッセイ

日本香堂コメント:
当たり前の日々、それを表現する何とも言えない機微に触れて、そこにもし香りがあったら…と想像が膨らみました。Yohakuのある生活で何かが変わるといいなと期待を込めて、日本香堂賞をお贈りしたいと思います。

選考委員コメント:
「明日、飲むでしょ。」お茶の小さな声を受け取ることができた“私”は、私が見ている世界から、お茶が見ているであろう世界へ視点を切り替えることで、もうだめかも、というきつい夜を乗り越えます。夜、水出しのお茶を仕込む。周りからみるとなんとはない日常の行為が“私”にとっての決意であることが、痛いほど伝わってきます。余白の使い方、文章の緩急がとても上手く読み手を惹きこむ力を持った作品だと思います。

◆Made in ピエール・エルメ賞
受賞者: 吉岡幸一
作品名:月の文字
ジャンル:詩

Made in ピエール・エルメ コメント:
シンプルながらも想像力を掻き立てられるストーリー性にブランドとの親和性を感じました。 文章も美しく、「文字が私の口の中に入ってくる」という表現が食をイメージさせるところもポイントです。

選考委員コメント:
情景が目に浮かぶような優しくて美しい作品です。でも、優しくて美しいだけではなくて、一文字一文字の間から、書くことの苦しさやもどかしさが切々と伝わってくる凄みがあります。それらをうまくバランスさせながら、物語性のある作品に仕上げているところに作者の力量を感じます。

◆嬉野八十八(うれしのやどや)賞
受賞者:磯部まき
作品名:五・父・五の風景
ジャンル:エッセイ

嬉野八十八コメント:
お父様の「口数がどうも逆転していた。五・七・五という形態を伴って」いる姿が目に浮かびます。それを見守る筆者とお父様との間にやさしくも強い絆が感じられて心温まりました。
また、旅のカタチ、家族のカタチ、いろいろありますがすべて愛すべきカタチであるというメッセージに共感し、たまには親との家族旅行も…と背中を押してくれる本作品に嬉野八十八賞をお贈りします。

選考委員コメント:
目的を持たない自由気ままな旅も良いが、テーマがあると旅に一本軸が通る。各地で句を詠みあげる父は、シャッターを押す代わりに家族との思い出を封じ込めているようにも見える。

◆選考委員賞 染谷拓郎 推薦
受賞者: さとうきいろ
作品名: わたくしは誰かの日記を300円で買う
ジャンル:短歌

コメント:
これだけで、一冊の本になる。つくりたい。と思わせるような、情景と感情が湧き上がる短歌群です。昭和60年の誰かの日記と令和5年のわたしが交感することで、彼女の人生(のある時点)が、ふと前に進んでいきます。

◆選考委員賞 深井航 推薦
受賞者: 武富伊万里
作品名: 私の好きな事
ジャンル:エッセイ

コメント:
手紙を通して得た体験を綴ったエッセイ。書くことが個人の体験に留まらず、外の世界を広げていくきっかけになっており、その様が生き生きと伝わってくる。書くことの原体験がつまっているこの作品にわたしの選考委員賞を贈りたいと思いました。

選考委員賞 宮脇亜矢 推薦
受賞者: 北木 鉄
作品名: 耳はていねいに洗う
ジャンル:小説

コメント:
「はじめまして、新しい耳よ。耳をつくるってそういうことだ。」詩的なメタファーでありながら妙に納得させられる一文です。身体を洗って温泉に浸かる、というわりかし単純な行為を神聖な儀式のように表現していますが、神々しくなりすぎていない文章に好感を持ちます。
時を超えて人の数だけ、いい温泉の判断基準があるのが楽しく、自分はどうだろうと想像力を掻き立てられます。

‐次点作品 ※順不同
大賞や各賞すべての候補作が力作揃いでした。各賞を残念ながら逃した次点の作品名・作者を発表します。

『アーベントロート』 冬海凛
『うれしノート』 宮﨑憲太郎
『おすそわけ』 織守きょうや
『たんたかたんか』 天野 若花
『テータレおやじ』 佐々木晋
『一期ひと恋』 花園メアリー
『一枚のメモ』 あんのくるみ
『詠み聞かせ』 もりごう
『家族限定茶』 村山道子
『覚悟の緑』 七瀬菜々
『欠けている』 香雪蘭
『失恋』 宮原すみれ
『終わりなきマトリョーシカ』 冬海凛
『春風の吹くころ』 樋口悠
『傷、そして火炎』 上篠翔
『雪どけ』 奥下龍
『地上を走る地下鉄』 大橋輪
『湯玉』 兎耳山みちる
『逃亡作家』 高遠みかみ
『内側から見た世界を詠む』 有友紗哉香
『父親の整い』 板倉貴陽
『母の前ではお香を焚く』 永田芽衣
『旅する印刷屋』 田中葵葉
『滲む街』 杉本 開
『『喫茶去』 と 縁』 対比地百合子
『2020年5月31日~』 田中亮

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